vol.45 生産性と環境対応2011.04.07
生産性と環境対応
めっきをする製品は小さなビスから長物ボルト、プレス品など
多種多様であり、1kgあたりの表面積や容積も異なっています。
したがって、どのような製品をどのくらい生産(月産)するのか、
稼動時間(時間、日数)をどのくらいにするかなどの条件によって
装置の設計は大きく変わります。
また、めっき被膜の析出は製品形状により異なります。
どのくらいの電流密度で通電することが効率の良い方法かも考える
必要があります。
ビス・ボルト類とプレス品とでは、同じ重量でも容積が大きく違ってきます。
そうなるとバレルの容積、処理カゴの容積も変える必要に迫られます。
上述してきたように、めっき設備は製品によって、タクトタイム、
通電量、バレル寸法、処理カゴ寸法、レイアウトなど大きく変動する要素
が多いのです。
この要素をバランスよく考えないと環境に負担となる場合があります。
それでは具体的に1つの例で計算してみましょう。
M6×10 六角ボルト(20dm2/kg)をめっきするために
電流密度0.5A/dm2で、めっき時間90分、1時間あたりの生産能力 1.5t
の装置を考えた場合、投入量、タクトタイム を変えた2種類の設定で
電気代を比べてみます。
① 投入量を1バレルあたり100kgと設定、
4分タクトで、めっき槽数 23 の装置の場合。
100kg×20dm2/kg=2,000dm2
2,000dm2×0.5A/dm2=1,000A 電圧15V
<電気代>
15V×1,000A÷0.82×90分/60分=27.4KWH
27.4KWH×15円/KWH=411円
411円÷100kg= 4.11円/kg
② 投入量を1バレルあたり50kgと設定、
2分タクトで、めっき槽数 45 の装置の場合。
50kg×20dm2/kg=1,000dm2
1,000dm2×0.5A/dm2=500A 電圧8V
<電気代>
8V×500A÷0.82×90分/60分=7.3WH
7.3KWH×15円/KWH=110円
110円÷50kg= 2.2円/kg
上記計算から、同じ生産量の装置でも ②のバレル投入量を50kgで設定
した方が、①の投入量100kgで設定したものと比べ 1kgあたりのめっきに
掛る電気代が約半分になることがわかります。
使用電気量が半分であればCO2の排出量も半分になります。
生産性でみると、②の装置が生産性の高いものになります。
しかし、②の装置は、タクトタイムが短くなった分バレルの汲み出し回数
が増えて2倍になるため、薬品使用量が2倍になります。
このことから、生産性だけを考えず、中間的な発想を持つ必要が
あることがわかります。
表面積の大きいものは半分の投入量、表面積の小さいものは2倍の
投入量とし、表面積としては1バレルあたり1,000dm2投入を目標に
設備を構築していくという考え方が良いのではないでしょうか。
次回は、「クロメート処理液」について考えたいと思います。
記事UPは4月25日の予定です。
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